吉田愼悟

よしだ・しんご
YOSHIDA, Shingo

環境色彩計画、色彩論

Urban Color Design

教授

Professor

2010年4月着任
1949年神奈川県生まれ
武蔵野美術大学造形学部
基礎デザイン学科卒業

研究テーマ:

環境色彩調査を通して地域固有の色彩範囲を把握し、各地域の公共空間における色彩のあり方を研究する。

職歴:'73-74年 向井周太郎デザイン研究室勤務、'74-75年 渡仏 ジャン・フィリップ・ランクロ教授アトリエ勤務、'75年 株式会社カラープランニングセンター入社('94年から取締役、現在に至る)、'76-83年 阿佐ヶ谷美術専門学校非常勤講師、'84-00年 東海大学教養学部芸術学科非常勤講師 、'89-07年 武蔵野美術大学基礎デザイン学科非常勤講師、'90年 有限会社クリマ設立 代表取締役(現在に至る)、'94-04年 長岡造形大学非常勤講師、'94-10年 武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科非常勤講師、'98-11年 早稲田大学芸術学校非常勤講師、'99-07年 九州芸術工科大学('03年より九州大学)非常勤講師、'07年 首都大学東京非常勤講師(現在に至る)、'07-10年 武蔵野美術大学造形学部客員教授、'09年 中国人民大学芸術学院色彩設計専業兼職教授(現在に至る)、'10年 武蔵野美術大学教授。
単著:『まちの色をつくる…環境色彩デザインの手法』建築資料研究社 '98年、『景観法を活用するための環境色彩計画』丸善株式会社 '05年。
主な共著:『色彩計画ハンドブック』視覚デザイン研究所 '80年、『環境色彩デザイン―調査から設計まで』美術出版社 '84年、『景観からのまちづくり』学芸出版社 '88年、『景観』ぎょうせい '91年、『都市と色彩―魅力ある環境づくりをめざして』洋泉社 '94年、『都市のデザイン―きわだつからおさまるへ』学芸出版社 '02年、『色彩用語辞典』東京大学出版会 '03年、『カラーコーディネーションの実際』東京商工会議所 '03年、『幕張ベイタウンの都市デザイン…MIC2001土田旭グループの試み』都市環境研究所 '12年。

YOSHIDA, Shingo

Professor


I have been practicing environmental color planning since the 1970s. I created a method of showing a community’s color distribution using objective numerical values based on color surveys of its buildings and other features. This way of thinking was incorporated in Japan’s Landscape Act, which came into force in 2004. Today, color standards have been drawn up in communities throughout Japan. By quantifying the color characteristics of buildings and other features, previously considered a matter of taste, they have come to be seen as the common property of local residents. The colors of a community are something public, sustained by the history of the community. They do not exist independently but interrelate to create the rich landscape of the community.

地域性と色彩デザイン―地域に蓄積された色彩を活かす景観形成―

私は大学を卒業して間もなく、フランスの著名なカラリスト、J.Ph.Lenclosのアトリエでまちと色彩の繋がりを研究する機会を得た。フランスの伝統的なまちにある建築の外壁色を等質の色票に置換え、それぞれのまちの色彩分布状況を調べた。そこで出会うフランスの伝統的なまち並みは何処も魅力的で、統一感と個性を併せ持っていた。このような魅力的なフランスのまちの景色に出会って、古いまちを壊し、新しくつくり変えることに邁進している日本の都市のあり方に疑問を持った。そして残されていた伝統的なまち並みの色彩構造に興味を持ち、日本でも調査を続けた。
日本の伝統的な建造物のほとんどは木造であり、そこに使われている色彩もおのずと限定的な範囲に収束する。戦後の住宅には防火のために様々な新建材が開発され使用されているが、昭和初期頃まで日本の住宅は木材や土や漆喰で仕上げられており、ペイントが発達したフランスのように、自由に色彩を選択できる余地はなかった。自然材が持っている色域は狭い。しかしこの限定的な色域によってつくられたまち並みの表情は、とても豊かで変化に富んでいた。鮮やかな原色を多用することが、まちに楽しさや賑わいをもたらすのではない。地域の気候・風土に育まれた秩序ある色使いが個性的で印象的なまちをつくる。どのような色彩でも使用出来るようになった今日でもなお、地域の気候・風土に育まれた建材の色が、基本的にはそれぞれのまちの基調をつくっていると思う。

主な環境色彩計画・色彩調査・色彩基準策定等
1974年 ヨーロッパの環境色彩調査(フランス、ドイツ、スペイン等のニュータウン等の色彩調査)
1981年 川崎市都心部アーバンデザイン基本計画/色彩調査・提言(都市環境研究所)
1984年 兵庫県景観条例色彩指導基準作成(兵庫県)
1992年 弘前市環境色彩調査(都市環境研究所)
1993年 都市空間における快適な色彩景観検討(建設省区画整理課)
2004年 奈良県色彩ガイドライン策定調査(奈良県)
2005年 小田原市環境色彩調査(小田原市)
2005年 藤沢市環境色彩調査(藤沢市)
2007年 首都高速道路路線指定色に関する研究(首都高速道路)
2009年 中国無錫市環境色彩計画(中国無錫市)
2011年 狭山市駅西口駅前再開発事業色彩調整(大日本コンサルタント)



八日市護国地区の町並み
内子のまち並みの建築立面図を起こし、色彩の使用範囲を示した着彩立面図を作成した。この立面図により、実際に使われている色彩の面積比が分かる。


内子の景観:

内子の景観:

環境色彩調査の対象となった、漆喰に土を混ぜた黄土色の外壁が連なる内子のまち並み。
建築外装色の測色:

建築外装色の測色:

調査用の色票を伝統的なまちに持ち込み、建造物の色彩を測ってその分布状況を把握する。
内子のカラーパレット:

内子のカラーパレット:

内子で測色したデータをもとにアクリル絵の具で色票をつくり、外壁・格子・屋根瓦別に色票集にまとめた。




関係性と色彩デザイン―コラボレーションによる総合的な景観形成―

色彩は全くの単色で見えることはほとんどない。まずは背景色との関係があるし、常に素材感や形態を伴って現れる。そのため環境の色彩デザインは、常にまち並み全体の調和を考えて、関係性を調整することとなる。
私が参画した“幕張ベイタウン公園東のまち”の色彩計画でも、各建築設計者が個性を表現しつつ、まち並みとしての統一感をどのようにしてつくるかがテーマとなった。幕張ベイタウンは一つの街区に必ず複数の建築設計者を入れることになっているが、これも建築群に多様で豊かな表情を持たせることを意図してつくられた手法である。また建築設計者の他に、ランドスケープデザイナー、カラーデザイナー、照明デザイナー等、多岐にわたるの都市デザイナーが設計の早期から協働して計画を推進したが、このデザインコラボレーションと呼ぶ手法も統一感と個性を併せ持つ豊かな環境形成に向けて試みられた新たな手法である。
環境の色彩デザインの仕事は、建築物や道路の色彩を指定するばかりではない。地域の色彩を調査して色彩特性を把握し、地域の景観を育てるためのガイドラインを策定することも大きな仕事である。環境の色彩デザインはまちづくりと深くかかわっている。美しく快適なまちをつくるためには、まちづくりに係る多様な専門家が協働して、常に関係性に配慮して、総合的に計画を進めることが大切であると思う。

主な環境色彩計画・建築等色彩計画等
1976年 鹿児島県鴨池海浜ニュータウン色彩実施計画(東急設計)
1980年 横浜郵便集中局機械化設備色彩計画(郵政省)
1987年 宇宙開発事業団種子島宇宙センター大崎射場吉信射点色彩計画(宇宙開発事業団)
1994年 臨海副都心台場地区色彩実施計画(東京都)
1995年 プロムナード仲町台色彩設計(住宅・都市整備公団)
1998年 幕張新都心公園東の街色彩計画(都市環境研究所)
1998年 臨海副都心台場色彩計画(住宅・都市整備公団 東京都住宅供給公社)
1999年 六甲道再開発外装色彩計画(環境開発研究所)
2003年 新田地区色彩実施設計(都市基盤整備公団東京支社)
2009年 豊四季台団地色彩計画(UR都市機構)
2010年 ソウルハンラ建設外装色彩デザイン監修(ハンラ建設)
2011年 都市機構九州5団地環境色彩改修計画(UR都市機構九州支社)



幕張ベイタウンの色彩計画:

幕張ベイタウンの色彩計画:

幕張ベイタウンは“建築でまちをつくる”という理念の下に計画が進められた。デザインコラボレーションによって建築設計者、ランドスケープデザイナ—、照明デザイナー、カラデザイナーが恊働してまちをつくることも試みられた。
10YR CITY西新井:

10YR CITY西新井:

西新井駅前再開発では調和ある都市景観の創造を目指し、建築の外壁基調色はすべて10YRの色相にある色彩を使うことをデザインガイドラインで規定した。この色相は周辺に存在する建築物の色彩調査で得られた中心的な色相である。この計画によって、限定された色相でも補助色の使い方によって十分に変化がある景観が形成されることが確かめられた。




公共性と色彩デザイン―市民参加の景観形成―

美しいまち並みをつくるためには、行政や都市デザイナーが環境色彩の重要性を認識するばかりでなく、一般の人達が上手に住宅等の色彩が扱えるようになることが必要である。このような視点に立って、近年住民と行政が協働してまちの景観を検討する試みも増えた。実際に地域の住宅や工場や公園の遊具の色彩を考える色彩ワークショップも数多く開催されている。このような色彩ワークショップに参加した住民は、調査をすることによって地域の色彩的な特徴を知り、色彩デザインのプロセスを体験する。さらに指定した色票で実際の住宅や遊具が塗装されることによって、大きな色面になった時の色彩の効果を知ることが出来る。地域の色彩は、最終的にはそこに住む人達が選択し、育てていくものであろう。趣味や流行で個人が勝手に色彩を選択していては、いつまでも地域の景観は混乱したままである。美しい地域の景観を育てていくためには、住民との協働が不可欠である。

主な社会的活動・アドバイザー等
岩手県まちづくりアドバイザー、佐賀県美しい景観づくりアドバイザー、山梨県景観アドバイザー、春日部市都市景観アドバイザー、横須賀市色彩アドバイザー、上越市景観アドバイザー、戸田市景観アドバイザー、富山県景観アドバイザー、小田原市景観アドバイザー、埼玉県景観アドバイザー



八王子市の公園遊具カラーワークショップ:

八王子市の公園遊具カラーワークショップ:

八王子市でまちの色彩を考えるワークショップが企画された。子供達が日頃利用する公園の遊具の色彩をきれいにすることで、まちの色彩の大切さを知ってもらうことを意図した。公園の景観と調和するように、遊具の色彩は公園で採集された樹木の葉の色彩から選択するようにした。紅葉した桜や銀杏の葉が遊具にふさわしい楽しげな雰囲気を演出している。
八王子市の公園遊具カラーワークショップ:



上越市の色彩ワークショップ:

上越市の色彩ワークショップ:

上越市の小学校で環境色彩への理解を育むために、色彩ワークショップが企画された。6年生が学校の階段室の色彩を自分達で考え、1日できれいに改装した。お昼からは父母も参加し、体育館で餅つきを行い、皆で食事をしてから、階段室踊り場のグラフィックペイントを仕上げた。
上越市の色彩ワークショップ2

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