玉蟲敏子

たまむし・さとこ
TAMAMUSHI, Satoko

日本美術史

History of Japanese Art

教授

Professor

2001年4月着任
1955年東京都生まれ
東北大学大学院文学研究科
博士課程前期修了
博士(文学)

研究テーマ:

中世〜近世の造形と社会、絵画と他の造形ジャンルまた文学との交流、日本美術史研究の方法と記述。

とくに「琳派」をはじめとする中世〜近世美術を、中国・明末清初の文人趣味の波及と19世紀後半のジャポニスムを視野に入れて、全方位的視点で捉えようと試みる。静嘉堂文庫美術館主任学芸員をへて現職。
著書:『絵は語る13 夏秋草図屏風』平凡社 '94年(第16回サントリー学芸賞)。『都市のなかの絵』ブリュッケ '04年(第16回國華賞)。『生きつづける光琳』吉川弘文館 '04年。『俵屋宗達 金銀の〈かざり〉の系譜』東京大学出版会 '12年(第63回芸術選奨文部科学大臣賞)。

TAMAMUSHI, Satoko

Professor


Specializing in Japanese art, and the Rinpa School in particular, I study the development of decorative arts in Japan from the Heian period through modern times. Books I have published to date include Toshi no naka no e: Sakai Hōitsu no kaiji to sono efekuto [Paintings Born in the Urban Environment of Edo: The Art of Sakai Hōitsu and His Followers] (Brucke, 2004); Ikitsuzukeru Kōrin: imēji to gensetsu o hakobu “norimono” to sono kiseki [Kōrin Lives On: A Vehicle for Images and Discourse] (Yoshikawa Kōbunkan, 2004); and Tawaraya Sōtatsu: kingin no “kazari” no keifu [Tawaraya Sōtatsu and the Tradition of Gold and Silver Paintings in Japanese Art] (University of Tokyo Press, 2012). Keeping an eye on trends in Asia and the West, I hope to continue investigating Japanese art history in a way that is both open and in keeping with the times.

主な著作

[1]〜[3]琳派三部作、[4]展覧会図録、[5]〜[6]論文集

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[1]『俵屋宗達 金銀の〈かざり〉の系譜
東京大学出版会、2012年
『生きつづける光琳』

[2]『生きつづける光琳』
吉川弘文館、2004年


『都市のなかの絵――酒井抱一の絵事とその遺響』

[3]『都市のなかの絵
――酒井抱一の絵事とその遺響』

ブリュッケ、2004年
『御用絵師の仕事と紀伊狩野家』

[4]『御用絵師の仕事と紀伊狩野家』
武蔵野美術大学美術資料図書館、2006年


『講座日本美術史5〈かざり〉と〈つくり〉の領分』

[5]『講座日本美術史5
〈かざり〉と〈つくり〉の領分』

編著、東京大学出版会、2005年
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[6]古画備考研究会編
『原本『古画備考』のネットワーク』

共編著、思文閣出版、2013年





私が現在、取り組んでいる研究テーマや視点は、卒業論文・修士論文を執筆した学生時代、1980年4月から2001年3月までの静嘉堂文庫美術館(東京・世田谷)の学芸員時代、本学に教員として赴任した2001年4月以降の活動が積み重なって成り立っている。これらは一見ばらばらのようでいて、日本美術研究という共通のテーマによって緩やかに結ばれており、一貫した流れを形作っている。


学芸員としての研究活動

学芸員生活のスタートを切った1980年代は、各地で美術館・博物館の建設ラッシュが続く美術館の時代だった。21年の間、三菱財閥社長、岩崎弥之助・小弥太の父子二代が明治中期から昭和前半にかけて築いた静嘉堂文庫美術館の収蔵品の調査・研究に従事した。静嘉堂は東洋・日本の古美術品の国内有数のコレクションで、日本の鎌倉時代から近代の絵画、仏教美術、漆芸、陶磁器、中国・朝鮮の絵画、仏教美術、漆芸、陶磁器、さらに茶道具・書跡など全般におよぶ。だが、ごく一部を除いてほとんどが未紹介であったため、調書作成・カード化といった基礎的な整理作業に加え、展示・図録作成をとおして一般に広く紹介し、さらに新知見をアカデミズムに還流させるため学術雑誌に発表するなど積極的に活動した。大徳寺瑞峯院に伝来した「堅田図襖」(室町時代)の研究(『國華』1206号、1996年)、特異な伝世の仏教美術を集め、問題を提起した「仏教の美術」展図録(1999年)などがこの時期の代表的な仕事といえる。


日本美術史研究者としての活動

国立の総合大学の学部および大学院で日本の近世美術史を専攻した私は、専攻分野の調査・研究、学術論文の発表などの活動を行なってきた。卒業論文以来、専門としている本阿弥光悦・俵屋宗達、尾形光琳、酒井抱一らの「琳派」の研究では、新たな作品研究方法を模索する『絵は語る13 夏秋草図屏風』(平凡社、1994年)、「琳派」概念の形成史について考察を深めた「《光琳観の変遷》1815-1915」(『美術研究』371号、1999年)などを踏まえて、東北大学に博士学位請求論文「〈琳派〉と日本の造形文化」を提出した。その成果は『生きつづける光琳』(吉川弘文館、2004年)、『都市のなかの絵――酒井抱一の絵事とその遺響――』(ブリュッケ、2004年)、『俵屋宗達 金銀の〈かざり〉の系譜』(東京大学出版会、2012年)の琳派三部作として完結した。武蔵野美術大学に転任してからは、江戸時代狩野派の朝岡興禎編著『古画備考』を対象として科学研究費補助金研究「江戸時代における〈書画情報〉の総合的研究――『古画備考』を中心に――」(第Ⅰ期2003-05年度、第Ⅱ期2006-08年度)に6年間従事し、現在、データベースをウェブ上で公表するとともに(http://www.musabi.ac.jp/rpc/grant_in_aid.html)、論文集『原本『古画備考』のネットワーク』(思文閣出版、2013年)を刊行している。


教育活動で心がけていること

園城寺光浄院にて(造形学コース、古美術研修旅行)

園城寺光浄院にて(古美術研修旅行)

アーティストやデザイナーを目指す若い人々に日本美術の面白さを伝える仕事に無限の可能性を感じている。本学の学生の場合、講義の成果が作品として提示されることがあるからだ。
学生の多くは、表面的なイメージで日本美術を捉え、食わず嫌いになっているところがある。日本美術史の概説Ⅲ、各論Ⅲなど、学部生向けの授業では、なるべく現代的な興味の延長上から過去の作品の世界に入り、だんだんに特有の表現や基礎知識を会得してもらうよう心掛けている。グローバル化時代を迎えた現在、日本のアートがアジアや欧米と交流を深めて発展してきたことを知るのは、ますます重要となるだろう。
大学院造形研究科造形理論・美術史コースでは、日本美術工芸史研究・日本美術工芸史演習・造形学演習を担当し、美術史を専攻する大学院生の指導にあたる。日本美術史の研究は、一面、文学部系の学生に有利ではあるが、「道はあるはずだ」と思い、本学に相応しい美術史学のあり方を学生とともに模索している。日本で日本美術を学ぶ利点は、作品生成の場の雰囲気を体得できることで、都内の見学や古美術研修旅行などもその適切な機会となるだろう。 ページの最初へ