佐久間保明

さくま・やすあき
SAKUMA, Yasuaki

日本近代文学

Japanese Modern Literature

教授

Professor

1988年4月着任
1947年福岡県生まれ
早稲田大学大学院

研究テーマ:

佐藤春夫を中心とする日本近代文学・児童文学および国語教育。

編著書:『「文章倶楽部」総目次索引』不二出版 '85年。『佐藤春夫と室生犀星 詩と小説の間』有精堂出版 '92年(共編著)。『石橋忍月全集』(全5冊)八木書店 '95-96年(共編)。『太陽総目次・執筆者索引』八木書店 '99年(共編)。『安成貞雄その人と仕事』不二出版 '04年(共編著)。『文章の新教室』武蔵野美術大学出版局 '06年。『文学の新教室』ゆまに書房 '07年。『レポートの教室』武蔵野美術大学出版局 '11年。『残照の日本近代文学 一九二〇年前後』ゆまに書房 '13年。
論文:「「西班牙犬の家」から見えるもの」『定本佐藤春夫全集月報30』臨川書店 '00年。「『のんしやらん記録』の主人公」『国文学 解釈と鑑賞』至文堂 '02年。「文学と教育との接点にあるもの」『月刊国語教育』東京法令出版 '08年。「帝国美術学校時代の金原省吾―同盟休校から分裂へ」『武蔵野美術大学研究紀要』No.41 '10年。「『文章倶楽部』の青春群像」同No.43 '13年。
展覧会企画(監修):「現代のしかけ絵本」武蔵野美術大学美術資料図書館 '07年。「コドモアサヒの時代」武蔵野美術大学図書館 '10年。

SAKUMA, Yasuaki

Professor


My area of specialization is modern Japanese literature, particularly novels from around 1920. I mainly study the work of Kenji Miyazawa and Haruo Sato. Recently, I have also lectured on juvenile literature and picture books.
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研究の軌跡

高校の在学時にわが国の近代作家の作品を読み耽っていたわたしは、大学進学にあたって迷わず日本近代文学を専攻した。学部の頃は教授の指導を受けつつ卒業論文は正宗白鳥を対象にした。大学院に進学してからは同じ専攻の仲間とともに幅広く明治・大正・昭和にわたる作家や作品に接する機会に恵まれた。そこで当時まだ全貌がよく知られていなかった文芸雑誌『文章倶楽部』に出会った。雑誌の全体を見極めるために総目次を編もうと一念発起し、古書展で実物を集め不足分は知人の研究者や日本近代文学館などの蔵書を閲覧して初めて一冊にまとめた。『文章倶楽部』は文学にあこがれる青少年に向けて、文壇を賑わせていた作家の動静がつぶさに伝わってくるような記事を盛った雑誌である。百五十冊に及ぶ全冊に目を通すことによって、個々の作家たちを以前にまして身近に感じるようになったことが大きな収穫であった。『文章倶楽部』の編集を経て小説家となった加藤武雄をはじめ大正期に活躍した佐藤春夫や広津和郎などの作品に自分なりに親しんだ結果、「田園の憂鬱」から「都会の憂鬱」「美しき町」「のんしやらん記録」に至る小説の考察を深めることができた。また佐藤が師と仰いだ生田長江や奇人で有名な安成貞雄の仕事の詳細を知り得たのは研究の視野を広げるよい機会になった。さらに同時代の文壇と無縁だった宮澤賢治への関心は、講義をする過程で考察を深めてゆき、代表作の「注文の多い料理店」に関する論考の発表へと至った。そういう意味で講義というかたちがわたしにとって意義深いものとなっている。

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「現代のしかけ絵本」図録

武蔵野美術大学美術資料図書館
デザイン:西中賢 2007年
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「コドモアサヒの時代」図録

武蔵野美術大学美術資料図書館
デザイン:西中賢 2010年



講義の現場にて

教室で毎日のごとく学生たちと向きあうことが研究の源泉になると実感している。本学に研究と教育の場を得て二十年以上を過ごしてきた間に、児童文学という近代文学の一分野にわたしの関心が集まるようになってきた。これは児童文学が多くの学生の関心であったと同時に、みずからの資質にも適っていたということがある。講義ではまず児童文学の本質を示すことから始めた。近年ではそれにとどまらず、そこから近代日本の絵本や絵雑誌へと対象を拡大させている。今日目覚しい活況を呈している絵本の創作や発行に関する少し前の事情や実態がほとんど未開拓となっているので、それをできるだけ明らかにしたいと思うからである。対象である多くの絵本や絵雑誌が消耗されたり散逸したりしているという厳しい現状ではあるが、調査と考察に微力を尽くしていくつもりである。

文芸Ⅰ・Ⅱ

本科目では、絵本や絵雑誌の歴史を明治以降の近代において学ぼうとするものである。絵本は絵と文学との協同作品と言える。それらをそれぞれ別個に扱うのではなく一体のものとして見ることに絵本作品の意味がある。対象となる絵本や絵雑誌の実物に触れる機会が乏しいという制約が生じるものの、個人的に一冊ずつ丹念に収集した実物だけでなく、複刻や複製などを活用しながら当時の実態に迫りたい。そこから新しい時代を切り拓いてきた児童文学作品だけでなく、忘れられていた個性豊かな童画家たちに出会うことができるだろう。

文芸演習Ⅰ・Ⅱ

絵本の創作の秘密に迫りたいというのが本科目開設の動機である。松居直の創刊した月刊絵本である『こどものとも』が母胎となった絵本を中心に、絵本作家の創作現場を実感しようと試みるものである。それだけでは大それた言い方にしかならないが、検討の実際としては同一作品における異本や異版を対象にしつつ、それらの比較対照を通じて絵本創作の機微に触れようとすることが目標である。そこから結果的にわが国の1950年代以降の創作の実際について考える道が開けてくることになる。

文章表現Ⅰ・Ⅱ

本科目は2002年に始まった四年制の通信教育のための科目である。Iでは年間七回のスクーリングに合計三百人ほどの受講生が参加しており、IIはレポートによる添削指導である。学部課程における学習レポート制作の指導については、新たな教科書の書きおろしをはじめ自分なりに工夫を重ねてきたが、まだ改善の余地がいくつも残されていると痛感している。この分野では英語のアカデミック・ライティングに相当する日本語表現の指導法が確立されていないので、基礎的な水準から大学生としての標準にまで到達するような段階を追った方法を明確に示すことが困難である。これからもスクーリングという通信の学生と向き合う貴重な機会を大いに生かしてより良い指導法を模索してゆきたいと思っている。

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