西本企良

にしもと・きよし
NISHIMOTO, Kiyoshi

基礎造形、映像デザイン

Animation, Multimedia, Digital Media

教授

Professor

2005年5月着任
1951年山口県生まれ
武蔵野美術大学造形学部
産業デザイン学科
商業デザイン専攻卒業

研究テーマ:

音や動きに対する視覚の特性とコンピュータを介在させたアニメーション、また情報デザインの分野でのインタラクションについて。

アニメーション制作者として、博覧会や博物館の展示ソフト、TVコマーシャル、プロモーション・ビデオ、テレビの科学番組の解説アニメーションなど多様な分野で活動。マルチメディアの草創期におけるソフトの開発にも関わる。現在は音や動きに対する視覚の特性を研究するとともに、情報デザインの分野でのGUI(グラフィカル・ユーザー・インタフェース)やインタラクションの問題、コンピュータを用いたアニメーションの表現の可能性なども研究対象とする。
'00年マレーシア・ビデオ・アウォード・フェスティバルにて講演。自主制作作品に「積層体」'82年、「笑う月」'00年がある。'04年自主制作アニメーション「笑う月」を含むビデオ教則本のパッケージ“Starting Stories”が英国フィルム協会教育部(British Film Institute Education)より出版。またその後、同作品を含む作品集DVD“International Animation Modern Classics”と“Box of Delights 2”がBAA(British Animation Awards)より出版されている。
'00年オランダアニメーション映画祭(オランダ)、'01年シカゴ国際児童映画際(アメリカ)、'02年アニマ・ムンディ国際アニメーション映画祭(ブラジル)他に出品。
'02年メディアシティ・ソウル国際アニメーション映画祭(韓国)にて、短編部門グランプリ受賞。
国際アニメーション協会日本支部(ASIFA-Japan)理事。

NISHIMOTO, Kiyoshi

Professor


Until 2005, Nishimoto was active as an animator in a diverse range of areas including exhibition software for expositions and museums, television commercials, promotion videos, and explanatory animation for television science programs. He was also involved in software development in the early days of multimedia. In addition to studying the characteristics of vision relative to sound and motion, he currently researches GUI (graphical user interface) and interaction issues in the realm of information design, and the potential for expression through computer-aided animation. Works he has created include Laminated Structure and Laughing Moon. Nishimoto is a board member of ASIFA-JAPAN (the Japan branch of the International Animated Film Association).
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「積層体」(1982年自主制作アニメーション):断面の重なりを時間軸・空間軸で変化させる事で手の型抜きを元にした積層体は様々な形に変容する

フォルムの単純化:エドワード・マイブリッヂ「Human Figures in Motion」を元に、必要最小限の構成要素に置き換える試み

フォルムの単純化:エドワード・マイブリッヂ「Human Figures in Motion」を元に、必要最小限の構成要素に置き換える試み


ミニマルなアニメーション:基本形態を分割し、その限られた要素によって表現可能なフォルムと動きを探る試み

ミニマルなアニメーション:基本形態を分割し、その限られた要素によって表現可能なフォルムと動きを探る試み


FLASHを用いたモーフィング例:細かくパーツに分けた要素をそれぞれ変形させている

FLASHを用いたモーフィング例:細かくパーツに分けた要素をそれぞれ変形させている


切り抜きアニメーション作画例:パーツに分けたものを重ねて、動きを作成する

切り抜きアニメーション作画例:パーツに分けたものを重ねて、動きを作成する




私は1970年代からアニメーション制作を始め、フィルムからコンピュータを使った制作工程への変化を経験して来た。またコマーシャルや音楽のプロモーション・ビデオ、博物館や博覧会の展示物、インタラクティブなマルチメディアソフト、テレビの教育科学番組など、多様なメディアに関わる事により、アニメーション表現の原理・特性、またその新しい可能性について考えるようになった。

アニメーション表現の特性

アニメーションの原理は、「静止した画像を素早く置き換えることで、その前後の絵の関連性から動きの錯覚を得る」というものである。従って、この前後の絵に関しては時間的・空間的に全く異なったものでも構わない。人間がそこに関連性を見いだし、動きを感ずるように画像を作成すれば良いのである。この原理は、フィルムやビデオなどに限らず様々な分野で応用出来る。
アニメーションの発明は、映画の誕生以前に溯り、ジョゼフ・プラトーのフェナキスティスコープが最初とされている。これは円盤上に描かれた一連の絵を、間欠的に次々に置き換えて見せることで動きの錯覚を得る画期的な装置であった。その後、映画が発明され、アニメーションもフィルムを利用することで、多様な表現が可能になっていった。
以下に、私が興味を引かれるアニメーションの特性を上げてみる。

●グラフィックをパーツに分ける

フィルムに一コマずつ撮影することで、同じ絵を何枚も描くのではなく、動かない部分は使い回しして、動く部分だけを変化させる方法がとられるようになった。これはセルを使った技術に顕著で、キャラクターや背景をパーツに分解して作画することで、作業の省力化を計ると同時に、必要最小限のグラフィック要素を探ることになる。

●動きをキーアクションで考える

節目となるポーズをキーアクションとして描き、次にその中間の絵を必要な枚数で中割りして行く。この方法により分業が可能になるが、それ以上に、キーアクションを探ることで、動きを整理しエッセンスを抽出する能力が培われる。

●リピート表現の可能性

省力化という観点から、ほぼ同じと見なされるものは使い回すという表現が生まれた。煙や落ち葉、波や雪などの自然現象から、歩きや走り、鋸を引いたりハンマーで杭を打つなどの人の動きまで、くり返しと見なされる現象は、動きの重なりやズレを工夫しながら、同じ絵を使い回してきた。ここでもやはり動きを分析してその特徴を引き出す能力が求められる。

●モーフィングの可能性

アニメーションの原理が、静止したものを次々に置き換えてみせることで動きの錯覚を得るものであるため、中間の絵を徐々に変えて行くことで、ある形から別の形へ自由に変形させて行くことができる。こうしてダイナミックな"形と意味のオーバーラップ"が得られる。この場合、どの部分が何に変わるかによって、受け取る意味合いも変わってくる。


動きとフォルムの関係性の研究(見立てのアニメーション)

上記のアニメーションの特性を踏まえ、動きと音響効果を伴った時、グラフィカルな最小限の要素でどういう表現が可能かを、具体的にインタラクティブな作品「見立てのアニメーション」を作成することで探ってみた。

〈制作手順〉

1.円と正方形を組み合わせた形を、2分割、4分割、8分割、12分割する。
2.分割された幾何形態を、動きを想定しながら様々に組み合わせて、何かに見立てたフォルムを形成する。
3.動きと音を伴ったリピートするアニメーションとしてフォルムを動かす。
4.パーツをクリックすることで他の形へ変形しながら展開していくようにオーサリングしていく。
尚、この作業中、エドワード・マイブリッヂによる写真集「Human Figures in Motion」の中から数点を選んで単純なフォルムに置き換えることにより、最小限の要素を探る試みも行っている。
この結果、静止画とは異なり、動くことによって繋がりを連想させる為には、フォルムを形成する際に幾何形態の間に相当な隙間(空間)が必要であること、また視覚を誘導する為の予備動作や後動作の演出が不可欠であることなどが明らかになった。従って静止画像としてフォルムを見たときには、それが何であるのかを特定することが難しい場合が多くなる。また、音響効果も見えない環境を連想させたり、動きや出来事を強調する為に重要なファクターとなっている。
尚、ここで作成した12分割のパートに若干の補正とストーリー性を加え、後日「笑う月」という自主作品として発表した。


コンピュータを介在させたアニメーション

フレーム単位で画像を構成するという意味でも、アニメーションは元々デジタルな媒体に向いていることが分かる。コンピュータを用いたアニメーション表現の特性として以下のことに注目してみた。
1.パーツに分けた交換可能なものを組み合わせることで、リアルタイムで多様な表現ができる
2.ループする動きを、時間的にタイミングを変えて、様々に組み合わせることが容易になり、コンピュータが法則に基づいて作り出す意外な形や動きを楽しむこともできる
3.動きの中割りをコンピュータが補助することで作者は演出により多くの時間を割くことができ、モーフィングなど、試行錯誤を経てより良い結果を得ることができる。
4.プログラミングを取り入れることにより、動きを伴ったインタラクティブな表現が可能となる。
以上の事柄を考慮して、1996年から授業にコンピュータを取り入れ、センサーを用いたインタラクティブなアニメーション作品やリピート表現・モーフィングを用いた作品を制作する課題を提出して来た。


現在の授業への取り組み

2年生の授業では、音響の専門家である前田耕造講師と共に、音と映像の基本的な構成要素と特徴を踏まえ、アニメーションを使ったインタラクティブなプレゼンテーション作品を作る課題を与えている。ここでは音と動きの重要性、インタラクティブな作品の可能性を学ぶことになる。
3年生の授業では、情報デザインにおけるマルチメディアの部分を主に担当している。新しい包括的なデザインの分野である情報デザインにおいて、動く要素、インタラクティブな要素、文字や音響効果といった様々なメディアとの融合は、大変重要である。学生はメディアにおける認知の仕組みを知り、ユーザーテストやタスク分析を通してユーザービリティの問題を考える中で、インタラクションの重要性、現在の社会に対応した新しいデザインの可能性を学んでいく。
ここでもインタラクティブなアニメーションはプロセスのシミュレーションやプレゼンテーションに活かされる。
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