圓山憲子

まるやま・のりこ
MARUYAMA, Noriko

低次元トポロジー

Mathematics

教授

Professor

1998年4月着任
1954年東京都生まれ
津田塾大学大学院
理学研究科博士課程
後期単位取得後退学
理学博士(津田塾大学)

研究テーマ:

3次元多様体の位相的性質の研究、特に、結び目や絡み輪に沿ったデーン手術を用いた構成や不変量の研究。

著書『もういちど数学を』武蔵野美術大学出版局 '02年。本学で開講される一連の数学の授業で扱うトピックスに加えて、「数学はパターンの科学である」(キース・デブリン)という見方を採って、数学の考え方や発展の流れを紹介し、新たなトピックスを書き下し、教場の臨場感を味わえるよう、あえて文章による記述が多いものとなっている。実際、教室の講義では、数学の広がりや奥行きが分かるように、色々な話題を提供し、理解を深めるために手を動かすことを積極的に取り入れている。
他分野との交流では、90年代後半、ファジー理論の応用により産業集積のメカニズムを表現するモデルを構成した。
本学卒業生・デザイナーと共同で「2000S/S 東京コレクション」にトポロジーの概念を表現する服のアイディアやショーの構成を行った。
共同研究(本学研究紀要 '03年)では、統計的手法により、学生の専攻分野によるアート・サイエンス・テクノロジー三概念の理解を比較研究した。
近年の研究結果は、“A survey of rational homology 3-spheres (I), Relation among RT-torsion, CW-invariant and SW-invariant”(有理ホモロジー3球面概説(I)、RTねじれ不変量、CW不変量とSW不変量の関係)(同38号 '08年)、「正則巡回被覆空間とCWL不変量を用いた手術係数の決定について」(On determination of surgery coefficients by regular cyclic covering spaces and the CWL invariant)(同40号 '10年)、「ある正則巡回被覆空間の1次元ホモロジー群の位数について」(On orders of the first homology groups of some regular cyclic covering spaces)(同41号 '11年)、“The CWL invariant and Surgeries along 2-component links”(CWL不変量と2成分絡み輪に沿った手術)(同42号 '12年)、“Lens surgeries along the n-twisted Whitehead links”(n回ひねりホワイトヘッド絡み輪に沿ったレンズ手術)(KYUNGPOOK Math. J.52、2012)、“The CWL invariant and Surgeries along 2-component links II”(CWL不変量と2成分絡み輪に沿った手術 II)(同43号 '13年)、“A survey of rational homology 3-spheres (II), G-homology cobordism and the CWL-invariant”(有理ホモロジー3球面概説(II)、Gホモロジー同境とCWL不変量)(同45号 ‘14年)。Seifert surgery on knots via Reidemeister torsion and Casson-Walker-Lescop invariant (共著 Topology and its Applications, 188, 2015)、Seifert surgery on knots via Reidemeister torsion and Casson-Walker-Lescop invariant II(共著 Osaka Journal of Mathematics, Vol.53 (No.3), 2016)。


http://www.erimatsui.com/works/
topology/topology.html

MARUYAMA, Noriko

Professor


Noriko Maruyama is a professor of Mathematics open to all majors at Musashino Art University. She received her B.S. in Mathematics from Tsuda College (1976 ), her M.S. in Mathematics (1978), and her D.S. (1994) from Graduate School of Mathematics at Tsuda College, where she wrote her thesis in the area of Low dimensional Topology. Her recent article is “Lens surgeries along the n-twisted Whitehead link”, Kyungpook Math. J. 52 (2012) (Joint work with T. Kadokami and M. Shimozawa). One of her interest is an application of invariants of 3-manifolds for classification of the results of surgeries along knots or links. She is the author of the textbook “Do Mathematics once again” for students of Correspondence Course Division, published by Musashino Art University Press (2002). She teaches several subjects of Mathematics by means of a wide variety of tasks for students to find examples, to notice patterns and to have fun in considering by moving hands.
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低次元トポロジーとのであいとかかわり

Topology=Topos+logos(トポロジー、位置解析)は、集合や図形の位相的性質の研究を行う数学の一分野であり、18世紀にオイラーが解決した「ケーニヒスベルクの橋渡りの問題」(一筆書きの問題として有名)や「多面体定理」がその発端であるといわれている。前者の問題においては、点とその繋がり方という関係性を抽出することに解決の鍵があった。また、5種類ある正多面体(プラトンの多面体)のどれもが「頂点数−辺の本数+面の枚数=2」(オイラー標数=2)という性質を持つが、それは正多面体がすべてボールの表面(球面)と位相的には同じものであることに由来する。これが、後者の定理からわかることである。こうして、図形を見るとき、形の大きさや面積といった計量的性質よりも、その図形をゴムなど柔らかなものでできているとして、図形を伸ばしたり、曲げたり変形(位相的変形/同相変形)しても変わらない定性的かつ大局的な性質に着目する視点が生まれた。今や、トポロジーは、多様な研究対象やテーマを包摂する現代数学の基礎的分野となっている。
円周や球や浮き輪の表面であるトーラス(円環面)などは、局所的には、直線や平面と位相的には同じもので、これらをつなぎ目で矛盾が起こらないようにつなぎ合わせてできたものということができる。例えば、地球は球面と見做すことができ、実際、私達は地図(チャート)によって、あらゆる場所を理解しているということである。局所的には、チャートという良く分かるものをつなぎ合わせて図形を構成するのだが、チャートの枚数やつなぎ方で様々な図形ができる。このような構成法でできるものを多様体(manifold、マニフォルド)という。前後左右上下という3方向への自由度を持つ3次元空間をチャートにして、次々とつなぎ合わせて構成したものを3次元多様体、4次元空間をチャートにして4次元多様体、このように高い次元の多様体をいくらでも作ることができる。
多様体が大局的にどのような構造や性質を持つのかを研究することが、多様体のトポロジー的な研究となる。個々の多様体は具体的にどのように与えられるのか(構成問題)、二つの多様体はいつ同相か(同相変形で互いに移りあえるかどうかの判定問題)、同次元の多様体を同相か否かで分類すること(分類問題)、多様体が同相であるとき保たれる性質や数量的なものは何か(位相不変性、位相不変量の発見)、個々の多様体内の多くは次元の低い部分多様体の位置(トポス)や性質を調べることが、基本となる問題群である。
球面やトーラスなどの2次元多様体に関する基本的問題群は、位相構造や位相的性質がオイラー標数などの数量的な位相不変量で完全に記述されるという形で19世紀に完全に解決された。また、1950年代は、代数学で得られた知見を取り入れた代数的トポロジーが一気に開花し、その成果として、5次元以上の多様体の分類問題は原理的に解決を見た。しかしながら、3次元と4次元多様体という低次元多様体に関しては、これらの対象が織り成す変化に富む豊かさの為か、高次元多様体とは本質的に異なる困難がある。2004年にポアンカレ予想がペレルマンにより解決されたが、解決されるべき問題群が多く残されている。
3次元多様体には、チャートとその貼りあわせという原理的な方法の他、構成法が数種あることが1960、70年代に明らかにされ、そのうち球面を手術する構成法に基づく研究を行ってきた。
1950、60年代の代数的トポロジーは、抽象化が極まり、ジェネラル・ナンセンスと自戒をこめていわれる程の巨大な分野になった。この分野を学ぶことから、低次元トポロジーの研究をスタートし、"On the conditions that lens spaces bound rationally acyclic 4-manifolds"(修士論文、1978年)で、有理数と関係する構成で与えられる3次元多様体の族であるレンズ空間を代数的には4次元ボールと見做すことができる4次元多様体と関連付けて分類する(ホモロジー同境)問題を、代数的な条件として捉え議論した。代数的トポロジーの華々しい成果を用いたのだが、有理数を少し動かすだけで変化するレンズ空間という対象を捉えるには、より対象に即した精度の高い具体的な手法を用いることが課題となった。
この課題を解決するため、「3次元多様体とその同相変形を3次元球面内の絡み輪とその変形で表現することができる」という結果(R. C. Kirby、1978)を取り入れたのが、"Rational homology 3-spheres which bound rationally acyclic 4-manifolds"(Journal of Tsuda College、1980)である。ここで、絡み輪とは、結び目がいくつか集まったものである。結び目は、紐を片結びにしその両端を閉じたもののように、円周が空間の中で、自分自身と絡み合ってできる図形のことである。先にチャートとその貼り合わせで得られるとした3次元多様体が、両端を閉じた紐として表現され、3次元多様体の同相変形が紐を一定のルールで変形することとして捉えられるというのである。
次に、対象を広げて、ホモロジー的には3次元球面である3次元多様体に関する同境問題を同一手法で考究し、"Notes on homology 3-spheres which bound contractible 4-manifolds (Ⅰ) "(同、1981)、"同(Ⅱ)"(同、1982)を発表し、それまで知られていなかったあるブリスコーン型ホモロジー球面を含む族が可縮4次元多様体の境界として実現できることを示した。名称の由来となった高齢のブリスコーンは、ドイツの高名な代数幾何学者で、弟子たちに同境問題を解くよう提案したが、だれもこのトポロジカルな問題を研究せず、離れた低次元多様体の研究者たちがこれに取り組んだ。この後日談を教示され薦められ、上記論文で得た結果をブリスコーンに伝えたのは、2005年、春のことである。
個々の多様体がどの結び目に対応するのか、また何通りの異なるもので表現できるのかをテーマとした研究を引き続き行い、結び目の情報を持つ二つの空間から作った多様体が、一つの結び目として表現されるための十分条件を、構成に用いた結び目の情報と関連付けて、"Knot surgery descriptions of some closed orientable 3-manifolds"(同、1984)で与えた。再び、レンズ空間を対象とした結び目による手術表現問題を考究し、当時“知られていなかった”族の結び目による表現を口答発表によって与え、数年経過してまとめたのが"On Dehn surgery along a certain family of knots"(同、1987)である。“知られていなかった”ことを証明するために、結び目の位相不変量の古典的な多項式を用いたのだが、この手法の先取性と結果が1990年にレンズ空間に関するある大きな予想の部分的な族になっていることが(当時、この手法を主に用いて低次元多様体を研究するものは、日本には他にいなかったが)2005年春にこの手法による研究の第三世代ともいえる若手研究者らとの交流で明らかになり、このテーマで取り組むべき課題がまだ残されていることを知り、現在研究を進めている。
Whitehead絡み輪を一般化した2成分絡み輪の手術から得られるレンズ空間の分類が、代数的不変量で可能なことを明らかにすることができ、共著“Lens surgeries along the n-twisted Whitehead links”として2012年にKYUNGPOOK Math. J.52に掲載された(http://dx.doi.org/10.5666/KMJ.2012.52.3.245)。この研究に取り掛かったのは2007年夏、どの不変量で何が明らかにできるか、何が効果的な用い方であるのか、研究と議論を重ねて来た。本研究は、Reidemister TorsionとCasson-Walker-Lescop不変量である。この組み合わせでどこまで攻めることが可能なのかという問題意識が背景にあったのだが、この組み合わせが有効であるはず、かなり厳しい道中であることが予測されるのだが、有効な使い方を工夫すれば相当なことが出てくるはずという直感に導かれ、いろいろな幾何学的設定で効果を確かめる作業を進め、Seifert手術についての研究を共著にまとめた2報は国内外の雑誌に掲載。
Casson-Walker-Lescop不変量に関する個人研究も進めており、2013、2014年にホモロジー同境群との関係を調べたものを概説IIとして発表した。他に“On a distribution of rational homology 3-spheres captured by the CWL invariants”(2009. 3の版にその後の知見を加えたものを投稿中)、“Some arithmetic properties of the CWL invariants”(2009. 3版で予想としていたものを2015年に解決し、結び目手術で得られる有理ホモロジー球面を特徴付ける量をCWL不変量から導出し、その値を完全に決定し、値が決まる原因系を議論。2015年に投稿したものを2016年改定投稿)、“Congruence modulo Z among the RT function, the CWL invariant and the SW function”(2010. 9)、”On λ(M;M0)” (2012)、”On computation of λ(p, q)”(2013)があり、上記概説IIの定理の証明をまとめた論文“Rational homology cobordism and the CWL invariant”(2016)はレンズ空間のCWL不変量の為の新たな計算方法を導出し、その応用として同境群の位数との関係を議論するもので投稿直前である。


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