加藤幸治

かとう・こうじ
KATO, Koji

民俗学(物質文化研究)・博物館学

Folklore studies, Material culture Studies and Museology

教授

Professor

2019年9月着任
1973年静岡県生まれ
総合研究大学院大学
文化科学研究科
比較文化学専攻・博士(文学)

研究テーマ:

流通民具論による民俗技術の研究。
復興まちづくりのための公共民俗学研究。
常民文化研究の学史に関する研究。

民俗学とくに生業技術と民具、および民俗学史について研究している。もともと大学の学部では京都外国語大学で言語学を専攻、英語とアラビア語を勉強しながら卒業論文ではアフリカの都市のイスラーム文化について研究した。
大学院の修士課程では、帝塚山大学にて民具研究の岩井宏實氏に師事し、熊本県と奈良県をフィールドに縁日市とテキヤの調査研究に取り組んだ。博士論文は、民具研究の近藤雅樹氏のもとで、農業技術の近代化をテーマに紀ノ川流域をフィールドに民俗誌的研究を行い、総合研究大学院大学における文化人類学の専攻である比較文化学専攻(国立民族学博物館)にて博士(文学)を取得した。
'99年から和歌山県立紀伊風土記の丘の民俗担当学芸員として勤務し、紀伊半島の生業(農山漁村の生産技術と工芸)や郷土玩具、移民文化などの調査研究に従事。また博物館による参加型展示や体験型学習プログラムの企画・実践を行なった。同時に国立民族学博物館における共同研究等に参加し、北欧・中欧を中心に在外日本資料の調査に従事しつつグローバルヒストリーにおけるプロダクトデザインの研究に取り組んだ。
'09年より東北学院大学文学部歴史学科の専任教員として勤務し、'11年に准教授、'16年に教授に就任した。災害被災地における公共民俗学的な実践、アイヌ文化を中心としたエスニック・マイノリティの文化実践の研究、日本の民族学黎明期の学史研究などをテーマとしてきた。
'19年9月、武蔵野美術大学教養文化・学芸員課程研究室に教授として着任。現在にいたる。

KATO, Koji

Professor


I am a Folklorist especially on Material culture such as tools of folkways, handcraft industry, agriculture and fisheries technique of common people. Sometimes, it is said that the humanities are an academic that does not know when to be useful. Especially for those who have faced a massive disaster. Economics works on revitalizing the local economy. Engineering contributes to the creation of a new city. Researchers in the medical field have ideas about saving lives in times of disaster. What can history and art research do after a disaster? But, in the process of recovering museum collection from major disasters and working on the reconstruction of the affected areas, I am beginning to think about the role of the humanities.

民俗学とは

民俗学は、庶民生活の歴史的展開(ふつうの人々の暮らしの移り変わり)を明らかにする学問です。その研究の対象は、身近な生活の技や知恵(衣食住)、地域社会のなりたちや人のつながり(社会組織・家族)、暮らしを立てるための働く技術(生業)、暮らしの時間感覚(年中行事・人生儀礼・葬送墓制)、こころの内にあって暮らしのよりどころとなるもの(信仰・儀礼)、環境や自然に対する認識(民俗知識)、身体を通じて伝承される表現(民俗芸能)、言葉を介して営む文化(口承文芸・方言)など、生活のあらゆる側面にわたります。
現代の民俗学は、過去の暮らしを再現するような学問ではありません。あくまで現代に視点を置いて、今を生きる私たちの問題や地域社会の課題を、もっとも身近なくらしの営みから考えていくような学問です。言い換えれば、わたしたちの身近な暮らしの領域である「生活世界」が研究のフィールドであり、マクロな問題がミクロな「生活世界」にどのように作用しているのかを記述しながら、問題発見をしていきます。ここに、現場に身を置いて考えるフィールドワークの重要性が出てくるのです。「野」(フィールド)で考えるから「野の学問」とも呼ばれます。
現代の人文学・社会科学では、多くの分野がフィールドワークをします(歴史学・言語学・人類学・社会学・地理学・考古学・心理学・宗教学…)。そのなかで民俗学は、インタビュー・参与観察・踏査・民具や文献の調査などの方法で地域に関与していきます。その特徴のひとつは、フィールドとの関わりが数年から10年以上と、長期にわたることです。付き合いのなかから生活の理解をはかり、時間の推移とともにどう変化していくかも観察するからです。もうひとつの特徴は、あらかじめ設定した課題にもとづいて、その問題解決のためにフィールドワークをするのではなく、現場で何が起こっているのか、何を考えるべきなのかをフィールドワークを通じて把握する、問題発見の場とするところにあります。その発見した問題は、概して正解のないような問いであることが多く、社会に対して、こういうところに目を向けて考え続けようと提案するようなフィールドワークなのです。
近年の民俗学では、文化財や観光文化、災害と地域社会、記憶と伝承、テクノロジーと人間、家族の営み、グローバル化と人々の生き方、環境問題と生活文化、現代人の死生観、情報と生活など、現代的な課題に深くコミットする研究テーマが選ばれています。
また、アメリカ民俗学の影響も受けてパブリック・フォークロア(公共民俗学)という考え方も議論されています。これは民俗学者がフィールドで地域課題にどのように積極的に関与することができるか、そのことによってフィールドワークをどのように再編成されるべきかなどを検討するものです。


単著の紹介

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『文化遺産シェア時代:価値を深掘る“ずらし”の視角』

社会評論社 2018年

世界文化遺産や無形文化遺産、世界の記憶などのグローバルな文化的資源の価値づけから、日本の文化財保護制度や歴史系博物館まで、文化資源の現在を知るための入門書。


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『復興キュレーション:語りのオーナーシップで作り伝える“くじらまち”』

社会評論社 2017年

東日本大震災における文化財レスキュー活動と民俗学からの文化創造活動の実践を紹介しながら、牡鹿半島をフィールドに文化における「より良い復興」について提言したドキュメンタリー。


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『紀伊半島の民俗誌:技術と道具の物質文化論』

社会評論社 2012年

農山漁村の生産技術とその近代化や近代における変遷を、「流通民具論」の観点から記述した民俗誌。聞書きや民具はもちろん、地方文書や統計資料などを綜合的に用いる地域文化の研究法の提唱。


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『郷土玩具の新解釈:無意識の“郷愁”はなぜ生まれたか』

社会評論社 2011年

明治から昭和前期に在野の知識人が見出し、全国的な蒐集運動へと展開した郷土玩具は、単なる土産物や郷愁にひたる玩弄物ではなかった。郷土玩具に交錯するまなざしを読み解く、趣味の近代史。



民俗学者として

近年は次のようなテーマを中心に、民俗学およびそれに隣接する領域を巻き込んだ物質文化研究に取り組んでいる。
  • 津波被災地での文化における「より良い復興」のための文化創造実践
  • 捕鯨文化の形成過程に関する民俗誌的研究
  • グローバル・ヒストリーにおけるプロダクト・デザインの研究
  • 流通民具論(人・モノ・情報の流通)によるテクノロジーと人間の研究
  • 近現代における食文化の形成、とくに「郷土食」の調査研究
  • 戦前のアチック・ミューゼアムと渋沢敬三による民具研究の学史研究
  • エスニック・マイノリティの文化的実践の研究
  • ヴァナキュラー・アートとしての鯨歯/鯨ヒゲ工芸品の研究

博物館学芸員として

1999年から和歌山県立紀伊風土記の丘の民俗担当学芸員として10年間勤務。その間に紀伊半島の農山漁村および町場の調査研究と民具コレクション形成をもとに30回の企画展・特別展を実施。市民参加による展示の実践や、子どもを対象とした体験学習プログラムの開発・実践に取り組んだ(加藤幸治「市民の中の民俗博物館」岩本通弥、菅豊、中村淳『民俗学の可能性を拓く』青弓社 2012年ほかを参照)。
2009年から東北学院大学文学部歴史学科で民俗学分野を担当、同大学博物館の学芸員として10年間勤務。同館の企画展10回、東日本大震災の被災地における文化財レスキュー活動および文化創造活動による展覧会20回実施。災害復興過程における地域文化の見直しや災害の記憶の形成過程、復興期における文化創造活動などを実践的に調査研究。牡鹿半島・鮎川浜の復興拠点施設「おしかホエールパーク」における二つのミュージアム、環境省復興国立公園ビジターセンターとおしかホエールランドの人文分野の展示監修者として文化的な復興に貢献。この活動は、武蔵野美術大学の博物館実習等に引き継いで継続的に実施している(上記の単著『復興キュレーション』のほか、Koji Kato (2017) “The Story of Cultural Assets and their Rescue: A First-Hand Report from Tohoku”, Fabula, Volume 58, Issue 1-2、加藤幸治「脱・文化財レスキュー:ポスト文化財レスキュー期における文化創造活動の実践」橋本裕之・林勲男編『災害文化の継承と創造』臨川書店 2016年、加藤幸治「災害経験を伝えるメディア」上智大学文学部史学科編『歴史家の窓辺』ぎょうせい 2013年ほかを参照)。


展覧会図録等の監修・編著(一部)

  • 『絵本・おしかがえし:ぼくがであったむかーしむかし』東北学院大学博物館、2018年12月
  • 『クジラお宝珍物館:クジラ工芸と捕鯨の町の近代』東北学院大学博物館、2018年10月
  • 『おもひで写真帖―今よみがえる鮎川―』東北学院大学博物館、2018年3月
  • 『日本画家・平山郁夫が描いた「金華山の朝陽」』東北学院大学博物館、2017年8月
  • 『くじら探検記―よみがえる100年前の古写真帖―』東北学院大学博物館、2016年8月
  • 『躍動する身体―くじらの街のスポーツ文化―』東北学院大学博物館、2016年2月
  • 『鮎川浜の賑わい―よみがえる60年前の古写真帖―』東北学院大学博物館、2015年3月
  • 『牡鹿半島・思い出広場―一人ひとりのくらしの風景がみえてくる―』東北学院大学博物館、2015年2月
  • 『紀州藩で作られた人体模型―銅人形とその設計者たち―』東北学院大学博物館、2013年2月
  • 『紀州郷土玩具事典』和歌山県立紀伊風土記の丘、2007年10月
  • 『熊野・山に生きる知恵』和歌山県立紀伊風土記の丘、2005年9月
  • 『紀州・移動する職人たち―鍛冶・木地・炭焼き―』和歌山県立紀伊風土記の丘、2003年9月
  • 『紙すきの山里―紀州の和紙と紙の民具―』和歌山県立紀伊風土記の丘、2002年9月
  • 『職人町・漆器の黒江』和歌山県立紀伊風土記の丘、2001年9月
  • 『地びき網漁の生活―日高町産湯海岸―』和歌山県立紀伊風土記の丘、2000年10月

研究代表者をつとめた外部資金や共同研究

  • 「ポスト文化財レスキュー期の博物館空白を埋める移動博物館の実践研究」(代表者:加藤幸治)日本学術振興会科学研究費補助金 基盤C(一般)2015年4月〜2018年3月
  • 「戦前の渋沢水産史研究室の活動に関する調査研究」(代表者:加藤幸治)神奈川大学国際常民文化研究機構 2015年度共同研究公募(一般))2015年4月〜2018年3月
  • 『紀伊半島の民俗誌』(代表者:加藤幸治)日本学術振興会科学研究費補助金 研究成果公開促進費 研究期間:2012年度
  • 「日本における銅人形製作の医学史・工芸史の研究」(代表者:加藤幸治)日本学術振興会科学研究費補助金 若手(B)2011年4月〜2013年3月
  • 「戦後日本の民具収集運動と小規模地域博物館に関する博物館史研究」(代表者:加藤幸治)全国大学博物館学講座協議会東日本部会研究助成 2009年4月〜2010年3月
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