楫義明

かじ・よしあき
KAJI, Yoshiaki

展示デザイン、 ビジュアルマーチャンダイジング

Visual Merchandising

教授

Professor

1996年4月着任
1950年鳥取県生まれ
武蔵野美術大学造形学部
産業デザイン科
芸能デザイン専攻卒業

研究テーマ:

エンターテインメントとしての展示デザイン。

専門分野:博物館や美術館、企業の文化事業における展示設計、商業空間におけるディスプレイデザインとビジュアルマーチャンダイジングの研究、劇場空間の環境デザインなど、立体デザイン、空間デザイン。
作品:「東京ガス100周年記念展/コリドール」、「ブルーノ・タウト展」、「ウルム造形大学展」、「フランツ・チゼック展」、「永澤陽一展」(神戸ファッション美術館)、「ウィーンの銀器—ビーダーマイヤーから世紀末の文化史」(NIKIギャラリー冊)展示監修、「小松誠展」(東京国立近代美術館)「蓼科フォーラム・アートプロジェクト」、日本軽金属技術研究所、乃木坂アートギャラリー、府中の森芸術劇場、板橋区立エコポリスセンター、鷹岡市民プラザ(富士市)、全酪連「銀座クレムリ」、東京経営者協会などの展示設計、アートワーク、キュレーション。
著書:『VMD用語辞典』(共著)など。
日本ビジュアルマーチャンダイジング協会副理事長。
「小松誠展」展示デザイン

「小松誠展」展示デザイン

東京国立近代美術館 2008年

「御用絵師の仕事と紀伊狩野家」展示デザイン

「御用絵師の仕事と紀伊狩野家」展示デザイン

武蔵野美術大学美術資料図書館 2006年
「いわむろのみらい」創生プロジェクト展

「いわむろのみらい」創生プロジェクト展

アートディレクション:楫義明
デザイン:小倉壮平
新宿OZONE 2008年


「体力」をつける教育

私が所属する芸術文化学科は、アートの社会化とデザインの関係力構築を担う人材の育成を教育目的としている。アートが作家個人の内なるものから発せられる社会的メッセージとすれば、デザインは社会そのものの要因に根源がある。
教室での講義や演習を重ねる授業ではあるが、こういったアートやデザインの本質を理解し世界観を習得するには、現実の社会との関わりが欠かせない。担当する授業のほとんどを学外のさまざまな組織や団体と関係づけ、学びのテーマが現実においてはどのような状況にあるのかという、多分、主題の理想とは最も離れた地点から始めることが多い。
体力、つまり応用力の無い知識など使い物にならず、この体力をいかにして高めることができるかに腐心している。
2007年には六本木の21_21 DESIGN SIGHTで開催された「2008年目玉商品」展に、KDDIとのコラボレーションで出品される“マサイ族の家”の制作に学生達と取り組んだ。本物の家の作り方はこうだ。小さな雑木を寄せ集めて紐で縛り半球の構造を作り、それに土と家畜である牛の糞を混ぜて捏ね合わせたものを押しつけ、表面を覆っていく。それが乾燥したら完成。幸いにメンバーのなかにアフリカ旅行を経験した学生がいて、実物のマサイ族の家を見たことがあるという。写真も手に入れた。マサイ族をよく知るという大手ゼネコンの部長の協力や三宅一生氏の労いも得て、構造は鉄筋で代用し、牛の糞は匂いの点で使えなかったけれど、最先端のデザインスペースに巨大で美しい土の家が出現した。構造に使う雑木が足りなくなり、雨のなか、夜の六本木の並木道に繰り出した学生達が大量の樹木を持ち帰って来たときは、東京という都会の不思議と深さを感じたものだ。
2008年度前期授業「メディアプランニング」では、障がい者施設産品アンテナショップ改装計画に取り組み、デザイン、設計、施行、開業までを受講生全員で一貫して行った。
障がい者施設ではさまざまな目的を持ちながら産品を作っているが、障害者自立支援法の改訂によって自立を求められた結果、産品の販路拡大が大きな課題として浮上した。そのために三鷹市では、市内すべての施設産品を一同に集めて紹介するアンテナショップを企画し、施設の一つを改装することでそれを実現化しようとした。
しかし、ぎりぎりの予算のなかではショップデザインのすべてをボランティアに頼るしかなく、色々な経緯のなかで、国立天文台と協力しながら私の授業で取り組むことになった。デザインしたものすべてを学生と私が工房で作り上げることになったが、デザインの社会的意義が身をもって学生達に届いたと思う。
授業最後の日がショップの開業の日となり、7月7日の七夕の日に「星と風のカフェ」は市長立ち会いのもとで慎ましやかにオープンした。小さなウィンドウディスプレイを作っておいたので、今でも三ヶ月毎に季節のデザインを変えるアフターケアを学生達が続けている。
2008年度後期の「ビジュアルコミュニケーションデザイン」では、広告代理店(株)電通と人権問題を取り上げてコラボレーションする授業を行った。人事局人権啓発部と私とのやり取りの中から実施が決まり、電通社員と家族から募集したいくつかのショートメッセージ(人権スローガン)が提示され、それをもとに学生達が人権ポスターを作るというもの。
毎週の指導には、電通の人権担当者と現役バリバリのアートディレクター(ムサビ卒)が何人も来校し、ポスターの完成まで親身の指導を行い、完成したポスターは後日、電通本社特設ギャラリーに電通社員の作品と共に展示された。
また、授業の模様は東京都総務局人権部が取り上げ、東京都提供の特別番組(MXテレビ)の中で放映し紹介された。今後も、さまざまな地域でポスターの展示を積極的に行い、啓蒙の一助になればと、電通と共同で計画を進めている。2009年も授業は継続の予定。
この他にも10年以上にわたってデザイン活動を学生達と続けている府中の森芸術劇場など、真面目な取り組みを評価していただき、学生の経験値を高める為の場所を継続して提供していただいている所は多い。
単なる創作活動の教育では、生き抜いていけない。社会で生きる意味を知り、覚悟し、そしてムサビで学んだことが自信になるようなことを、学生達との時間に使いたいと思う。

「人権アート・プロジェクト」学生作品 2008年

「人権アート・プロジェクト」学生作品 2008年

チョ ウンジ
「人権アート・プロジェクト」学生作品 2008年

「人権アート・プロジェクト」学生作品 2008年

熊谷篤史

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